【Chromebook活用事例】Chrombookの総合相談窓口を生徒だけで組織する

広尾学園中学校・高等学校様

新型コロナウイルス感染症拡大により、学校教育はこれまでになかった窮地に立たされました。今回は休校中にChromebookを利用して、オンラインでの指導を実現した広尾学園の榎本先生にお話を伺いました。

教員ではなく生徒自身がオンライン授業のための研修を行う

御校では自粛期間中にChromebookを利用したオンライン指導をされていましたが、どのような準備をされたのでしょうか?

本校は3月から休校となったのですが、3月末からオンライン授業の可能性について模索を始めて急ピッチで準備し、4月1日に全教員へ研修を行いました。その後希望した教員に向けて再度フォローアップ研修を開き、実際に授業を開始したのは4月15日です。

研修中に気を付けたことは二つあります。まずは、とにかく質問をしてもらうこと。わからないまま進めずに、疑問点はしっかり確認して進めました。

次に、Google Meetを使うこと。Zoomを使われる学校も多いですが、パソコンが苦手な先生は画面下部にメニューが並んでいるだけで複雑そうだと思ってしまいます。Google Meetはメニューが4つしかないので、Zoomよりわかりやすいようです。

生徒さんへの研修はどのように行ったのですか?

私たち教員から生徒へは特に何もしておらず、ICT委員会の生徒に任せました。この委員会はChromebookや各種アプリなど、ICTツール全般の相談窓口となっている組織です。

私からは彼らに「生徒みんながオンライン授業をスムーズに受けられるように、解説サイトを立ち上げて」とお願いしただけです。そこでできたサイトを生徒たちが見て、それぞれやり方などを学んでオンライン指導が開始しました。

オンライン授業の実現により新しいメリットが生まれる

オンライン授業をどのように行ってらっしゃるか、オペレーションを教えてください。

オンライン授業を行う
榎本 祐介氏(写真右中央)

各クラスや授業のGoogle Classroomに連携されたGoogle Meetの部屋(URL)があり、生徒はChromebookなどの端末からそこに入ります。そこから時間割に沿って授業の部屋に移動し、授業が終わったら休み時間の間に次の部屋に移動して、また授業を受けるという繰り返しです。

授業のやり方は教員ごとに様々ですが、私は対面式の授業から一切スタイルを変えていません。普段はホワイトボードに資料のPDFを投影して、解説しながらラインを引いたり注釈を書いたりしていました。オンライン授業ではGoogle Meetで画面共有して、PDFの編集テキストでコメントを書いていきます。文字は手書きよりきれいですし、準備も楽になりました。

オンライン授業ならではのメリットが生まれたのですね。一方でデメリットはありますか?

PC操作に慣れていない、チャットでのやりとりに慣れていないという先生にとっては、双方向の授業をすることが難しくなったようです。授業動画の配信をしている科目もありますが、生徒にアンケートを取ったところやはり双方向の授業を求めていることがわかりました。

ただこれは、本校だけの問題ではありません。授業を双方向性にすべきということについてはゆとり教育が始まったころからずっと指摘されてきました。改革がされないまま二十年以上経ってしまいましたが、コロナ禍で改めてこの問題が浮き彫りになったのだと思います。

授業以外にはどのようにChromebookを活用していらっしゃいますか?

定期テストをオンラインで行いました。遠隔になる以上、生徒は教科書などを簡単にみることが出来てしまうので、大学のような資料持ち込み型の試験に変えました。当日はGoogle Classroomに問題のPDFを配信して、生徒は50分間で問題を解きます。そして20分間でGoogleフォーム上に解答を入力して、送信するという流れです。

教員は今までとは違うテストを作る必要が生まれましたが、Webで検索するとすぐ分かるような情報だけでない考え方が身に付くので、個人的にはオンライン試験の方が生徒の学びを適切に評価できるのではないかと思います。

HRなどのコミュニケーション面でも、Chromebookをお使いいただいていますか?

教員は今までとは違うテストを作る必要が生まれましたが、Webで検索するとすぐ分かるような情報だけでない考え方が身に付くので、個人的にはオンライン試験のChromebookにはカメラとマイクがあるので、生徒と教員、生徒同士のコミュニケーションに活用しています。実は新入生はまだ、一度も学校に来ていません(インタビュー当時。1学期中は6月4,6日に分散して一度だけ登校)。生徒同士はもちろん、私たち教員ともまだ顔を合わせていない状態です。本人たちも「友達はできたけど、まだ一回も会ってないから不思議な感じ」と言っています。

やはり例年と比べて、最初はなかなかやり取りがしにくいようでした。ただ初めのうちは教員からコミュニケーションを取りやすくなるよう働き掛けをしたこともあり、今は親しくやり取りできているようです。

ICTツールの導入は学校にとって長期的な財産になる

今からオンライン授業を始める学校へ、アドバイスをいただけますか?

他校の先生にお話を伺うと、Chromebookなどのデバイスを取り入れる際、対教員への研修で悩まれることが多いようです。その解決策として、本校のICT委員会のように生徒組織を作るといいと思います。ITリテラシーのある生徒で組織を作って、そこに教員が巻き込まれるという形がおすすめです。

現状、先生への研修がハードルになっていることが多いのですね。

もともと教員はICTツールのスペシャリストではなく、教科のプロフェッショナルですからね。しかし苦手意識を持っていた先生たちもいざやってみたら便利さを感じているようで、今後生徒が登校するようになってもいくつかのツールを使い続けるそうです。

せっかくなら、今後もICTツールを上手く取り込んでいった方が有益ですね。

はい、オンライン授業をまったくやらずにしのぐのはもったいないですね。これを機にICTツールの利用を始めれば、導入時は大変ですが長期的に見てより質の高い教育を実現できると思います。

オンライン授業に苦手意識がある先生方にアドバイスはありますか?

授業においては、やはり双方向が重要です。授業動画を作ることに注力するのではなく、教員だからこその強みを活かしてほしいと思います。

その強みとは、生徒一人ひとりを理解していること。授業中に「この問題はこの生徒に解いてもらおう」とか「ここであの生徒に発言してもらおう」とか、そういった臨機応変な対応ができるのは教員ならではです。

オンライン上でも、生徒さんの性格などはわかるものですか?

授業でやり取りしたり面談したりするので、「この子は明るいな」とか「この子は大人しいけど、化学の時間はたくさん発言してくれるな」など感じられます。

また、不登校気味の生徒がいましたが、オンライン授業ならと参加してくれて、そこでいい発言をしてくれたんです。その時はしっかり取り上げてあげたのですが、こういうことができるのも教員の強みです。

あまり学校に来られなかった生徒さんも、オンライン授業なら参加しやすいんですね。

学校に行くというハードルがなくなるのは大きいようです。本校ではパジャマなどでなければよいというドレスコードにしているので、参加しやすいのかもしれません。

本日は多岐にわたるお話をいただき、ありがとうございました。

実際にオンライン授業を始めてみるとたくさんの学びがあるので、ぜひ多くの学校で導入してメリットを感じていただければと思います。

広尾学園中学校・高等学校

所在地:東京都港区南麻布5-1-14
TEL: 03-3444-7271
https://www.hiroogakuen.ed.jp
設立1964年

本事例に関するご相談はこちら