教育理念の一つに、「変化に適応できる教育」を掲げる晃華学園中学校高等学校。
こちらのミッションスクールでは現在、生徒が一人一台、自分自身のiPadを所有し、学習や特別活動に使用しています。導入後にどんな効果があったのか、なぜCYOD方式を選んだのかなど、眞中先生に伺いました。
― iPadを導入した経緯について教えてください。
ICTツール導入にあたり、ICT担当教員がタブレットやノートパソコンの性能、他校での導入事例などをリサーチしました。その結果、iPadを40台購入し、活用を開始。
導入目的は、学習面で役立てることだったので、初めのうちは、英単語を覚えるためのアプリなど活用しました。しかし時間が経つにつれ、今ではもっと多様なシーンでの活用するようになっています。
― どういったシーンで活用されたのですか?
特別活動などです。
例えば、中学校1年生の生徒は多摩動物公園に行き、そこで調べたことをiPadを使ってKeynoteでまとめ、プレゼンテーションしています。
高校生はiPadで志望校のオープンキャンパスについて調べたり、本校独自形式の自己分析シートをWordで作って提出したりといった活用をしています。
このように、何かを調べたりまとめたりといったスキルは、社会人になってからも役立つものだと感じています。
― iPad導入にあたって生徒や先生方への研修は行いましたか?
教員には学期ごとに研修を行っています。
スキル毎に三段階にわけて開催しており、一番上のクラスではSharePointやMicrosoft 365への知見を深めます。真ん中のクラスではOneDrive上で一つのファイルを複数人で編集する方法などを学びます。一番下のクラスで学ぶのは、ファイルをOneDriveに保存する方法などです。
それぞれの教員のスキルを上げていき、最終的には「なぜ今、ICT教育が必要か」という講義をしていく予定です。
生徒に対しては、配布時はもちろん、年度初めや行事ごとに指導を行っています。具体的なアプリの使用方法などは、授業や特別活動を通して学んでいきます。
― iPadを共有ではなく一人一台配布へと切り替えた理由を教えてください。
初めに40台購入しましたが、どのように活用すべきが悩んでいました。そこで三谷商事に相談し、MDM(Mobile Device Management)を導入して、端末の管理やセキュリティ面の質を上げました。
そこで活用法を改めて検討し、本校の育てたい生徒像を考えると一人一台必要だと判断したことが、切り替えたきっかけです。
グループで一台を使うとなると、一人がメインで使って、あとの生徒は見ているだけになってしまいます。そうではなく、生徒全員に自分なりの活用を考えてほしいと思いました。
― 一人一台配布に切り替えたことで変化はありましたか?
活用度が一気に広がりました。生徒もカバーをつけるなど端末に愛着が湧くと同時に、けじめをつけるようになったと感じます。共有していたころは自分が使いやすいように設定を変更することは禁止していましたが、そういったこともなくなりました。
― 今年からはCYOD(Choose Your Own Device)方式となり、既に家庭でiPadを持っている生徒はそれを使うことができ、持っていない生徒は新たに購入するという形になりました。なぜこの方式を採用しましたか?
最近では小学生でもiPadを利用することが増えたためです。特に、コロナ禍によりそうした家庭が一気に増えました。
新中学1年生からCYOD方式としたので、保護者からも特に反対はありませんでした。また、付属小学校の先生方の反応は良かったです。これも、小中連携の一つの形だと思います。
― クラス活動の中で、どのようにiPadを使っていますか?
Microsoft 365を活用しています。アンケートを取ったり、面談の予定を共有したりと、かなり便利です。こうした作業が効率化したことにより、もっと大切なことに時間を使えるようになりました。
例えば、以前は面談についての諸注意を生徒にメモさせていましたが、今はiPadで共有しています。その代わり、「面談でこういう話をする」「こういうことを考えてきてほしい」といった点にフォーカスして話ができます。
― 授業では、どのようにiPadを利用していますか?
どの授業でもよく使っているのが、Teamsです。課題機能を使って宿題を提出しています。
資料はOneDriveで共有することもありますが、宿題は生徒同士が閲覧できないようにしたいので、Teamsを使っています。ルーブリックを設定して、生徒のノート内容チェックと返却もできるようなりました。
― 長期休暇中は、iPadをどのように利用していますか?
特別活動で活用しています。
具体的には、生徒からの発案でSDGsに関する啓発動画を製作しました。企画から編集までをiPadで行い、完成した動画は生徒・保護者・教職員・外部関係者にご覧いただき、グランプリを決めるという活動です。今年度は、iPadを用いた新たな企画が進んでいます。
英語科ではSpeaking Marathonという取り組みをしています。これは生徒が毎朝、英文をiPadに音読し、提出して、音声データをネイティブの教員がチェックするというものです。
― iPadを使う最大のメリットは何ですか?
生徒の能力を発揮する機会が増えることです。「何かを表現することを通して、他者のために役に立ちたい」と考えている生徒にとって、iPadという選択肢が増えることは大きい変化です。
また、デジタル教材を使用した学習で生徒の成長のチャンスが広がったと感じます。
― iPadに関してICT担当以外の先生からはどのような反応がありますか?
コロナ禍での休校を経て、Teamsなどの便利さを実感していました。導入当時は慎重な姿勢だった教員も、今では積極的に使ってくれています。
休校期間中にも、「新入生への発送作業を手伝うから、いち早く全家庭に端末を持たせてほしい」と言ってくれるほどです。今となっては「iPadのない運用はできない」というレベルまで浸透しています。
― そこまで積極的になってくださった要因は何だと思いますか?
アナログの良さを大切にする意見も、進んで取り入れていることです。以前、各学年の掲示板を廃止する案が出た際、「掲示板から必要な情報を自分の手帳に転記することは、コンピテンシーとして必要な能力」という意見が出たため、校長がその意見を採用しました。 すべてをデジタル化するのではなく、学校として大切にしているものを見失わないように前向きに議論をしていることがポイントだと思います。
― 保護者の方からはどのような反応がありますか?
私たちは晃華学園が目指す姿をベースとし、その範囲内での活用に限っていますが、そこはご理解いただけています。
「ICT関連の取り組みをやってくれている」という安心感を持っていただいているようです。また、受験生の保護者から「ICT教育を取り入れているんですよね」と問い合わせが入ることもあります。
― 最後に、これからiPadを使う学校へのアドバイスをお願いします。
運用方針をきちんと決めてから導入すべきという意見が強いですが、導入理由や大きな方針が決まったら、まずは思い切って導入してみるといいと思います。
現代の中高生はICTツールに慣れており、その能力を活用しない方がもったいないです。
また、それぞれの学校に指導方針があると思うので、それに沿った活用の方法を模索するのがおすすめです。そうすれば、具体的にどんな使い方はよくて、どんな使い方はダメなのかが決まります。
最後に、ICTツールは生徒の偏差値を上げるためのものではありません。主体性を育ませるためのものだと思います。その点を理解して導入すると、より導入が意味のあるものになると思います。
所在地:東京都調布市佐須町5-28-1
TEL: 042-482-8952
https://jhs.kokagakuen.ac.jp/
設立1963年
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