長崎県大村市にある、向陽高等学校。美容科、エステティック科、保育科、福祉科、調理科、パティシエ科、看護科が設置されており、特別なスキルを学ぶことができます。この向陽高等学校では生徒一人ひとりにiPadの導入を開始する中で、PC教室にもiPadを設置。具体的にどのように導入したのか、現在どういった活用がされているか、笹山教頭と佐々木教頭にお話を伺いました。
― 貴校でiPadを活用するようになるまでの流れを教えてください。
本校では、学校のICT推進を5か年計画で進めています。1年目から3年目は教職員のICTを活用した指導力向上やiPadを使った教育効果の調査、教室へのプロジェクター設置などを実施しました。また、3年目までに段階的に教員のタブレットを50台購入し、同時にネットワークも整備してきました。
4年目の今年度から、入学する生徒から順次一人1台のiPadの導入を計画しており、現在、1年生は全員iPadを所持しています。教員側や教室の準備が整ったところで、新入生に入学時に購入してもらいました。生徒はiPadを毎日持ち帰るので、本体を保護しながらキーボードも使えるタイプのカバーを付けました。
― ほかにも様々なタブレットがあるなかで、なぜiPadを選ばれましたか?
まず、教員用にiPadとWindows(surface)を5台ずつ導入し、どちらがよいかを検討しました。学校現場ではWordやExcelなどを頻繁に使うのでWindowsの製品にするという選択肢もあったのですが、使い勝手やセキュリティなどを考慮し、iPadの方が適しているという結論に至りました。
また本校の生徒たちは卒業後、ヘアサロンや病院といった現場に就職します。それらの職場で多く使われている端末がiPadだったので、学生のうちに使い方を理解していた方が仕事に活かせるだろうという点も加味しています。
― 卒業後のことまで考えた選択だったのですね。
はい、どの端末にするかはかなり悩みました。iPadやWindows製品のほかにChromebookも検討しましたが、やはり「本校の卒業生が就職した企業では、約60%がiPadを使っている」という調査結果が出たことが非常に大きかったです。
また、Androidのスマートフォンを持っている生徒よりiPhoneを持っている生徒の方が多かったので、iPadの方がスムーズに導入できるだろうとも考えました。
― 生徒さんにiPadを導入した後は、どのようにICT化が進みましたか?
PC教室の端末をWindowsからiPadに入れ替えました。すでに新入生にiPadを導入していたので、使いやすいように同じものにしようということで、50台導入しています
― PCからタブレットに変更されたということで、何か研修は行いましたか?
最近は生徒もタブレットの利用に慣れているので、特別な研修は行っていません。ただ、中学校でPCを使っていてスムーズにタイピングできる生徒もいれば、タッチはできてもタイピングは慣れてない生徒もいたため、キーボードの使い方はしっかり指導しています。毎日練習の時間を取り、本校の指導のベースにある「向陽高校5つの約束」を入力することで、タイピングの練習をしています。
5か年計画でICT化を進めていたので、教員への研修も不要でした。ただ、プロジェクターへのつなぎ方などに関してはサポートが必要だったので、三谷商事の担当の方に教えてもらいました。
―iPadの導入により、どんな効果を望んでいましたか?
学習指導要領の変更に合わせて、授業改善を行う必要がありました。その中で軸になったのが、「わかりやすい授業の実現」「生徒の主体的な深い学びの実現」「すべての生徒の可能性を引き出す個別最適・協働的な学びの充実」です。これを目的として、iPadを上手く活用できればと考えました。
一方で、入学時にiPadの購入をお願いするということは、保護者の負担が増加することに繋がります。そのため、新たに入学する生徒の保護者に対してiPad購入を納得してもらえるかという懸念があったことも事実です。ただ上記のような目的を説明したこともあり、反対意見はありませんでした。「今まで使っているものを持ってきてもよいか」「家でも使うからアプリを入れてもいいか」といった質問はありましたが、iPadを購入することに対するクレームなどはいただいていません。
― PC教室に設置したiPadと、生徒さんに導入したiPadはどのように使い分けていますか?
情報の授業はPC室に移動し、設置してあるiPadを利用しています。その他の授業で使っているのが、各生徒に導入したiPadです。
授業でよく使うアプリは、プレゼンテーションや学習履歴の蓄積などに活用できるロイロノートです。長期休暇中に課題を配信する時にも使っています。
本校ならではの使い方として、美容科やエステティック科などの生徒は自分が施術する様子をiPadで録画し、後から視聴してスキルアップにつなげています。また、調理科の生徒が先生の包丁さばきを録画し、復習のために利用することもあります。先生が自ら動画を撮って、それを配信することも多いです。
― 授業以外でもiPadを活用するシーンはありますか?
iPadを使っている部活動もあります。例えばバレー部では、練習の様子をiPadで撮って、スクリーンに映して確認します。これにより個人の動きやチームの動きがわかります。また、生徒が練習の感想や反省をiPadで顧問に送り、それに対してコメントを返すというやり取りもあるようです。
コロナ禍で、生徒が一日おきに分散登校していた期間もあったので、登校がない日は授業や課題を配信しました。
― iPad導入による最大の成果はどのようなことだと思いますか?
生徒にとって、授業がわかりやすくなったことです。ICTを使うことで理解度が上がりました。また、後ろの席の生徒は黒板やプロジェクターが見にくいという課題がありましたが、各自の端末に授業で使う資料を表示できるようになり解決しました。
―今後、より効果的にiPadを活用するために課題は何かありますか?
授業中に本来の意図とは異なる使い方をする生徒もいるので、そこはしっかり指導していきたいです。とはいえ、セキュリティ対策としてアクセス制限がかかっているので有害なサイトにつながることなどはなく、そこは安心しています。
導入にあたり「学校の様子をSNSに投稿してはいけない」「制服のまま写真や動画をアップしない」というルールを設けたのですが、これらが破られたことはありません。生徒は遊びのツールではなく学習のための端末だと認識しているようです。
―今後、iPadを使って取り組みたいことがありましたら教えてください。
探究活動でもっとiPadを活用していきたいです。例えば一つのテーマについてリサーチし、資料を作って、それをプレゼンするという授業を行いたいです。以前はわざわざPC室に行かなくてはなりませんでしたが、今では教室や自宅でも作業ができるので、スムーズに実現できると思います。
―最後に、iPad導入を検討している学校の方へアドバイスをお願いします。
本校では生徒の就職先で使われている端末に早い段階から慣れるよう、iPadを選びました。それぞれの学校でICTを導入する目的はそれぞれだと思うので、このように目的を整理してから何を選ぶか考えるといいかと思います。
また、自分たちだけで導入するのは不安がありますので、三谷商事さんのようにサポートしてくれるところを頼るといいと思います。本校も導入にあたり、わからないことは助けていただきました。
いずれにせよ「きちんと使えるだろうか」と心配しても、スマートフォンやタブレットに慣れている生徒は教員よりも早く活用できるようになります。実際に、教室で教員が上手くiPadを使えなかったとき、生徒が助けてくれるシーンもあるくらいです。心配しすぎず、ぜひ活用してもらえたらと思います。
向陽高等学校
所在地:長崎県大村市西三城町16番地
TEL: 0957-53-1110
http://www.koyogakuen.ed.jp/high_school/
設立:1924年
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