VDI(仮想デスクトップ)の3つの種類と特長

公開日:2021/01/25
最終更新日:2021/01/25

学校教育のIT化において、導入するパソコンの運用にかかる人的コストやセキュリティ対策は大きな課題です。VDI(仮想デスクトップ)の活用は、これらを解決できるソリューションの代表的な手法の1つです。今回は、VDIの概要と3つの種類、学校や教育現場に導入するメリットを解説します。

VDI(仮想デスクトップ)とは

VDI(仮想デスクトップ)は「Virtual Desktop Infrastructure」の略語で、使用する端末そのものによる処理を最小限にして、サーバー側で大部分を行う「シンククライアント環境」を構築するための手法です。

一般的には個々の端末にデータやアプリケーション、個人設定などが保存されますが、仮想デスクトップを活用すれば、生徒全員のデータをサーバーで一元管理することが可能です。生徒はログイン情報を入力することで、どのパソコンからでも自身が構成した環境で学習することができるようになります。

VDI(仮想デスクトップ)の3種類

VDIは実施する方法によって、「VDI方式」、「SBC方式」、「HDI方式」の3種類に区別できます。それぞれの特徴を簡単に解説するので、チェックしてみましょう。

VDI(仮想PC)方式

個々の仮想端末をサーバー上に作成する方法です。サーバー上にクライアントPCごとの仮想デスクトップを構築する(1デバイス=1仮想OS)ため自由度が高く、クライアントPCごとのソフトウェアの実行環境が幅広いことが特長です。ただし、Windows OSを使用する際には、端末ごとにライセンスが必要なのでコストが増大する傾向があります。

SBC(サーバーデスクトップ共有)方式

あらかじめサーバーにインストールされているアプリケーションやOSを、複数のユーザーが共有して利用する方法です。購入するライセンスが少なくて済むうえ、サーバーのCPU、メモリ、ストレージなどを効率的に利用することが可能です。コスト削減に期待できる手法である一方、サーバーにインストールされているOSなどに対応したソフトウェアしか利用できないため、実行環境の自由度はVDI方式ほど高くはありません。

HDI(ホスト型デスクトップインフラ)方式

各ユーザーに専用のサーバーを割り当てる方式です。VDI・SBC方式のようにサーバー内で仮想化したクライアントやデスクトップ環境を複数ユーザーが共有する方法ではありません。そのため、遠隔地や多数の利用者がアクセスしている環境でも快適に動作しやすいほか、セキュリティ性も確保しやすいメリットがあります。

需要が高まる「DaaS(パブリッククラウド)」

VDIサービスの新しい提供方法として注目されているのが「DaaS(パブリッククラウド)」です。DaaSは従来のような物理サーバーではなく、外部のクラウドサービスを利用した方法なのが大きな違いです。

DaaSが注目されている大きな利用は、イニシャルコストの低減が期待できることです。なぜなら、DaaSによるVDIはクラウドを活用して外部サーバーを活用するので従来の提供方法のように自社や学校のサーバーを設置する必要がありません。また、多くのクラウドサービスのように「サブスクリプション」の料金体系であり、メンテナンスなども業者が行ってくれるため、費用対効果に優れているのです。長期的には物理サーバーを利用した方が安価になるケースもありますが、小規模な学校にとっては選択肢に入れて損はないサービスといえるでしょう。

VDI(仮想デスクトップ)のメリット

VDIはクライアント端末にデータを残しません。そのため、紛失・盗難時も情報漏洩などのリスクの低減といったセキュリティの向上につながります。また、前述のとおりVDIはクライアント端末を一元管理できるのが大きなメリットです。OSやアプリケーションのアップデート、不正アクセスの監視、ユーザー情報の更新なども個々で設定するよりも大幅な効率化が図れます。

■学校現場におけるVDIを活用するメリット
・学外から専門的なデータ分析ソフトウェアが利用できる
・学外からキャンパス設置パソコンと同じ環境が利用できる
・図書館の蔵書検索データベースと連携可能         等

また、最近、需要が高まっているテレワーク環境でも、
・高セキュリティ性
・IT担当者の工数削減による効率化
のほか、個人PCを利用するBYODでも安全に会社のシステムにアクセスでき、ネットワーク負荷も軽減できるため、VDIを採用・導入する企業も増えています。新型コロナウイルスの流行時には、教員の就労環境の見直しをした教育機関も少なくないことでしょう。

まとめ

VDIの概要と種類、メリットについて紹介しました。企業はもちろん、多くの生徒(ユーザー)を抱える学校において、シンククライアント環境での運用はメリットが大きいことが考えられます。今後、GIGAスクール構想が広まるにつれてサーバーのリソースやネットワーク品質といった調整が必要な場面が増える可能性もあります。IT・情報システム担当者であれば、より現場に合ったVDIの導入に役立てるためにも、早めに知識を深めておいて損はありません。

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