Google Workspaceを使った授業の準備・実践・振り返り【後編】/昭和学院中学校・高等学校 教諭(理科・情報)博士(工学) 榎本裕介

公開日:2021/07/27
最終更新日:2022/06/27

 

【連載】榎本裕介の “教育×Google Workspace” 最前線

Google Workspaceを教育現場の最前線で活用されている昭和学院中学校・高等学校 教諭(理科・情報)博士(工学)榎本裕介先生にお話を伺いました。
現場の先生方がかかえる、ICT活用についてのいろんな悩みに回答いただきます!

 

今回は、Google Workspaceを使った授業の準備・実践・振り返り方法をご紹介するコラムの【後編】になります。【前編】では「年度の初めにやること」「複数クラスを担当しているときに最初のクラスだけやること」について説明をしております。

※【前編】はこちらからご確認ください。
 Google Workspaceを使った授業の準備・実践・振り返り【前編】
 https://www.mitani-edu.jp/column/060/

 

全ての授業でやること

授業時間内の操作

授業時間における操作はごく僅かです。教師自身の資料作成のためのローカルのフォルダにアクセスすることなく、Classroomを開いておくだけで完結します。説明資料・演習・振り返りを「予定を設定」にしておいて自動投稿、または下書きを再編集して適切なタイミングで手動で投稿します。生徒の持つ端末のOSによっては投稿の際に一度更新しないと新規の投稿が表示されないことがあります。また、「予定を設定」での投稿は数分のラグが認められます。

演習をする際、紙では実現不可能だった授業展開が可能となります。その場で生徒の回答を集計・閲覧することです。
演習のGoogleフォームを開き、右下の編集ボタンをクリックして編集画面に移ります。上部の「回答」タブに移動すると「回答を受付中」のスライドボタンがあります。演習をする際、生徒によってかかる時間が大きく異なることがあります。また、早く終わった生徒に正解不正解を先に通知すると、それを他の生徒がカンニングする形で演習を終えてしまうのも教師としては不本意です。フォームの設定では送信後に手動で結果を通知する機能もありますので、その設定をするのも一つの手です。しかし、その場合生徒はメールからスコアを確認することになるので、操作が増えてしまい、復習の際にもClassroom上の演習課題と自分のスコアが離れてしまうので望ましくありません。そこで、生徒が演習に取り組む時間の間は「回答を受付中」をOFFにしておいて、指定した解答時間が終わってから1分間だけ「回答を受付中」をONにして提出されるという手段が有効です。メリハリを付けることで時間を過ぎてもダラダラと回答を続ける生徒を防ぐこともできます。万が一「間違えて送信してしまいました」といった生徒が出た時には、フォームの回答タブから「個別」を選択し、該当生徒の回答だけを削除すればもう一度提出できるようになります。このとき、フォームの設定で「回答を1回に制限する」を解除してしまうとClassroomとの連携が解除されてしまいますので気を付けてください。

回答を回収したら、それらを利用しての授業が展開できます。「回答」タブの「概要」から生徒名が伏せられた状態で各問の集計と正解の選択肢が表示されるので、その結果に合わせて解説をできます。
具体的には、全員正解した問題は解説不要ですし、誰も選択しなかった不正解選択肢の説明も解説不要なことが多いでしょう。多くの生徒が引き寄せられた不正解選択肢について絞って解説することで、生徒の需要にマッチした解説ができます。

解説をしながら、実は事前に準備した正解が誤りだったということも教師のミスとして起こるかもしれません。その場合は「回答」タブの中の「質問」タブで正解・不正解を再編集してください。

最後に、授業の終了前の時間を使って振り返りを書かせます。こちらも、下書きから手動投稿か、予定を設定したものを自動投稿として課題を投稿します。「光合成についてわかった」「遺伝子についてわかった」と生徒は書きがちですが、具体的に分かった内容を書くよう口頭指示をしながら机間巡視をしましょう。5分から10分かけても「光合成は葉緑体が行っている」「遺伝子は生物の設計図である」くらいの短文しか書けない生徒もいるかもしれません。それでも内容が正しければ生徒はその授業で新しい知識を得て成長したわけですので及第点といえるでしょう。

課題の返却

Classroomの課題を表示します。ここで「成績をインポート」をクリックするとフォームで確定した数値がClassroom内に取り込まれます。その後、「返却」ボタンで生徒にメールにて得点の通知が届きます。私はこの作業を、授業の振り返りを生徒が書いている時間に操作しています。この返却作業は慣れれば数分で完了します。放課後に溜まった提出物を処理するのではなく、授業の合間の休み時間に採点・集計・返却を終えられます。

生徒の振り返りへのフィードバック

授業を終えてからの教師の仕事として、授業最後に行った振り返りの内容をチェックします。
Classroomから該当のフォームを開き、右下の編集ボタンで編集画面に移動します。「回答」タブの中の「質問」タブを開き、生徒の振り返りの文章を読みます。この画像では高1生物基礎の「セントラルドグマ」を扱ったときの授業の振り返りですが、当然一人ひとり印象に残ったことが異なります。上手く授業内容を要約できる生徒もいれば、教師として最も重要だとアピールしたところとは異なる点を書いてくる生徒もいます。ここでは、どんな内容であれ書いていれば10点満点をあげるというつもりで、「✓」をクリックするとその回答に点数を付与できます。内容に問題があるものを減点したければ数値を入力すればその数値が点数となります。

生徒の書いた振り返りの中にはクラス全体に共有したいものがあると思います。上手く要約されたものや、追加の質問、誤った理解をしているものが考えられます。別ウィンドウでClassroomを開き、トップ画面にある「クラスに知らせたいことを入力」に振り返りの一部を抜粋してコピー&ペーストします。教師からのコメントも追記しながら内容を作成し、投稿します。紙で同じことをやろうと思うと相当な時間のかかる作業が、かなり短時間で実現できます。

別クラスでの授業

リアルな授業実践の場での需要の一つが、別クラスでも同じ準備で授業を実施することです。
授業タブにて「作成」→「投稿を再利用」で実施済みのクラスを選択し、再利用する投稿を選択します。下書き状態のものでも再利用できます。一度再利用をすると、前回再利用したクラスがデフォルトのクラスとして選択された状態になるので、曜日の都合で進度が逆転しない限り、「投稿を再利用」を開いたら使いたい投稿をワンクリックで選ぶだけとなります。この作業は授業の前までに下書きまで準備しておいてもよいですし、うっかり準備を忘れてしまっても授業内ですぐ投稿作業ができてしまうくらい手軽です。

学期の終わりにやること

各学期の終わりには生徒たちの成績を処理する必要があります。かつては「教務手帳」のような紙媒体にメモした成績を、一つひとつ表計算ソフトに手打ちしていく作業が必要でしたが、Classroomを使えばその作業から解放されます。Classroom上では「採点」タブが実装されておりますが、現在の日本の学校では定期考査は紙で行うことがほとんどですし、Classroomを介さない提出物もゼロにはなりにくいです。それら別資料と成績情報を統合するには表計算ソフトで集計する必要が出てくるでしょう。

まず、「授業」タブから生徒に出した課題を何か一つ開きます。右上の歯車マークから「すべての成績をGoogleスプレッドシート」を選択します。このメニューは「採点」タブにありそうなものなのですが、なぜか授業タブで何か一つの課題を開いたところにあります。Googleらしからぬ迷いが生じるUIですがそのうち修正されるものと期待しています。

この段階では生徒が出席番号順に並んでいません。これは英語名仕様で、姓名の名のアルファベット順でソートされているためです。前編の「初回授業で生徒にClassroomに参加させる」で述べたとおり、Googleアカウントの名前に学年クラス番号の情報を付与しておくことで、ここでスムーズなソートができるようになります。

学年の終わりにやること

一年間の授業を終えたとき、それまで担当した授業の資料を捨ててしまうのはあまりにもったいないです。多くのクラウドサービスで馴染みが深くなった「アーカイブ」(保存・保管)がClassroomでも可能です。
Classroomのトップページにて、各クラスの右上の三点メニューから「アーカイブ」を選択します。クラスはトップの表示から消えます。生徒の画面からも消えます。この作業を教師がやらないと、生徒の画面には過年度のクラスがずっと残ってしまうことになりますので、必ずやりましょう。

アーカイブしたクラスを再び見たいときには、左上の三本線メニューから「アーカイブされたクラス」を選択します。過去に行った授業資料をベースに同じ単元を教える際の準備をすれば効率がよいです。Classroomに投稿したファイルは全てGoogleドライブ上に保管されています。過去に行った実践についておぼろげな記憶だけでもあれば、検索でそれを発掘することも可能です。紙での保管では探すのを諦めてしまうようなことも、Classroomを使った授業を続けていけば全てが活用できます。

また、次にその学年の授業を担当する別の教員に対して、どんな取り組みをしたか情報共有をする機会があるでしょう。その際には、アーカイブをする前にClassroomの副担任として招待しておくことで、丸1年間取り組んだ授業実践を丸ごと共有することができます。特に新任の教師にとっては、このような実践例を知ることは教師としての大きなステップアップにつながると考えられます。

おわりに

細かい操作内容を含めて記事としましたが、実際には「こんなことがやりたいな」と考えたことが直感的に操作できるUIがGoogleツールの最大の魅力だと思っています。
もし直感的に操作できなかったのであれば、それは開発側のエンジニアが気づけていない発想ということです。Classroomの左下に常に表示されている「?」から「問題を報告または機能をリクエスト」で意見を送ることでさらに使いやすいツールになっていくと期待できます。
一方で、他社ツールと比較して、Classroomが使いやすい理由の一つが機能を欲張っていないことです。リリース当時から使っている身としては、本当に教師が必要とする厳選された機能だけが詰め込まれたサービスだといえます。

様々な環境下で「どうしてもICTを活用した授業をしないといけない」という状況の先生もいらっしゃるかと思います。しかし、授業の目的は今も昔も変わらず生徒がよりよく授業を楽しみ、理解することです。ICTはそれを助ける手段であることを忘れてはいけません。手段として、充実した授業を実践するうえで必要な機能が詰まったGoogle Classroomを使ってよりよい授業を実践していきましょう。



今回のコラムは、2回にわたって昭和学院中学校・高等学校 教諭(理科・情報)博士(工学)榎本裕介先生にGoogle Workspaceを使った授業の準備・実践・振り返りの方法について回答頂きました。
今後も榎本先生には現場の先生方がかかえる、ICT活用についてのいろんな悩みに回答いただく予定ですので、楽しみにしていてください。


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